丸亀町商店街:まちづくりは、まち経営(1)
「まちづくりに必要なのは、経営視点」とおっしゃる高松丸亀町商店街振興組合の古川康造理事長。袋小路の状態にあった高松丸亀町商店街を救った綿密に計算された収支計画の策定とその経緯についてお話をうかがいました。
「過去のまちづくりの手法は全く使い物にならない」を前提に
古川理事長、以下「古」)過去のまちづくりの手法は全く使い物になりません。その背景は、人口減と高齢化が顕著になっているからで、これは、有史以来だれも経験してこなかったことです。
特に現場でまちづくりに関わっている人達もそうですが、自治体の職員なども意識を変えなければなりません。今までのまちづくりの手法は全く通用しません。それはまちづくりだけの話ではなく、社会の仕組みやビジネスもそうですね。
そもそも商店街というのは縮図みたいなところがあります。商店街というビジネスモデル自体が世の中に合わなくなっているのです。私たちが行ったまちづくりは、足元が崩れてしまったというのを前提にやってきました。
観光資源を作ろう、観光客を引っ張ろう、イベントをやってひとを集める、そういったレベルではありません。
まちづくりは土地問題に行きつく
-再開発にあたっては非常にご苦労され、大事なところは「地権者をまとめること」とうかがっておりますが。
古)土地問題を解決した、ということです。地権者は土地の利用権をもっていますから、どう使おうか本来は、地権者さんの自由です。
これは特に商店街に限らず、農地なども同じです。
休耕地になろうが、そのままにしておこうが、地権者さんの自由です。それをコントロールしようとしてもできなかったのです。
そのあたりに現代のような歪なかたちになってしまった原因があるのではないか、と思ったのです。そこで土地の所有権と利用権の分離を図ったのです。
バブル崩壊、瀬戸大橋の完成による二重苦があった。
古)報道等では、よくリーダーが地権者をまとめて、とかいわれていますが、実際は異なります。地権者さんの皆様は一刻でも早くやりたかったんです。
それはなぜか、時系列でお話しします。
1つ目は、土地問題です。
バブルがあり地価は、高騰しました。このあたりは、四国でも一番地価が高いため、銀行が押し寄せ、土地を担保にいれれば、お金を貸してくれました。地権者さんは、多きな借財を抱えることとなりました。結果、バブルがはじけた途端に、担保割れになり債務超過になった方が多かったのです。
次に、瀬戸大橋の完成により交通インフラが整備されましたためです。「高松の経済発達の起爆剤になる」、と当時の役所、財界、一般市民もみんな盛り上がりました。
しかし我々は別の考えをしていました。
この橋が商店街にダメージを与えると。本州のマーケットが大きいですが、四国はそれよりは小さい。今まで陸路で結ばれていませんでしたが、物資の安定供給ができないということで、大手の流通業者さんは四国へは進出しにくい状況にあったのです。
ところが交通インフラが整備されることによって一気にそれらがなだれ込んできました。私たちにはそれに対抗する手段がなかったのです。だから間違いなくこの商店街は廃れてしまう、という危機感がありました。
案の定、市内の売り場面積は倍以上に広がりました。そして、通行量と売上を一気に奪い取られていきました。
一方我々には、従前債務は大きくのしかかる、返済原資はどんどん失われてしまう、銀行は督促に来る、という状況になったのです。
その銀行も財務省にプレッシャーをかけられる状況でもありました。それは、不良債権の回収問題です。銀行は再生の可能性の有無を凝視していました。無しと判断されれば土地は競売にかけられる、そんな目前でした。しかし、返済原資は失われている、地権者は完全な袋小路に入ったのです。
時の情勢を読んだ再開発計画
こうした状況のなか、私たちは、活路を再開発事業に見出しました。公費、つまり補助金を導入して、補償金として地権者にお渡し、彼らはその補償費を銀行返済に全部回す、ということをしました。
地権者は一旦まとめて、全員無借金になったのです。その代わり60年間土地の利用権を放棄していただいたのです。
商店街の地権者は、一刻も早く袋小路の現状を打破したかったわけですが、従前債務の鎖がずっとついているうちは、投資は生まれません。
例えば業種転換をしましょう、新しい商品を導入しましょう、といっても従前債務が頭に乗っかっていると銀行は一切融資しません。
つまり、新たな投資は生まれないのです。従前債務をいかに断ち切るか、が重要だったのです。そのアイディアは、再開発事業を導入することによってできるため、地権者は一刻も早くやりたかったわけです。
まちづくりはまさに「収支計画」なのです。
-それをまとめるというのは、大変でしたか?。
古)全然問題ありませんでした。ポイントは、合理的に地権者のみなさんが納得できる完璧な収支計画ができるかどうかなのです。まちづくりはまさに「収支計画」なのです。
-全国の若い官公庁の職員等と話していると、なかなか自分の意見が通らない、通しづらい、ということを聞きます。
古)それはなかなかできないですよ。まちづくりの話の議論を突き詰めていくと、最終的には必ず土地問題に行きつきます。
地権者の協力ができないと何もできません、それが限界点です。だからみなさん商店街に空店舗ができたところの土地活用を考えよう、と言ってますが、ピンポイントでやっていても何の効果もありません。面で捉えなければいけません。
私たちは地権者に60年間土地の利用権を放棄させることで、一旦白紙にして、そのなかで新しいグランドデザインをしていったのです。
-->まちづくりに経営的視点を(2)につづく
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